かき氷

暑い。私の住むこの町にもとうとう夏がやってきた。今は部屋の片付けをしているが、タンクトップに半ズボンという格好でも暑い。自分の額がじんわりと汗で濡れているのが分かる。扇風機の風も妙に生暖かく、涼しさを感じられない。

私の部屋には物が多い。どっしりと構えた洋服ダンス、本棚には大量の参考書、浪人生だから仕方ないがとにかく本が多い。ベッド、薄汚れたぬいぐるみ、鞄、それらすべてに私の生気を吸い取られる。この部屋で毎日毎日私は少しずつ食われている。

一度すべての物を捨ててみたい。いる物いらない物関係なくすべてを捨ててみたい。もちろんそんなことをしたら生活していけないのだが、インストールという映画(もとは綿矢りさの小説)の中で上戸彩演じる朝子が自分の部屋の中の物すべてを捨ててしまうシーンがあり、妙に高揚感や清々しさを感じた。

生きるのはもっとシンプルでいい。この世の中の仕組みは私にはちょっと難しい。最低限の物と美味しい食べ物それから好きな人、それだけでいいのに。洋服だってこんなにいらない。服は大好きだけど良い服を着ると良い服に復讐されることを自分でも知っているので、やはり身の丈に合った少しの服でいい。

部屋の片付けがなかなか進まない。額から汗が滴り落ちてタンクトップの上に小さな染みをつくった。身体中がしっとりと汗ばんでいる。ああ、冷たいシャワーが浴びたい。部屋の片付けがひと段落ついたら浴びよう。部屋が片付いたら私は無敵だ。ヒーローだ。きっと順調に物事が進む。

額の汗がまたひとつ染みをつくった。暑い。本格的な夏が始まる。